「若年性認知症」「伊織弓鶴」「野菜」「メゾフォルテ、フォルティッシモ」「捨身品」「紅茶とコーヒー」「ヤマザキビスケットエアリアル」「爆発する首輪」「西北海道新幹線」「極東北独立紛争」をしたらよく分からないものが出来上がってしまった #出された単語で概念綴り
「若年性認知症」「伊織弓鶴」「野菜」「メゾフォルテ、フォルティッシモ」「捨身品」「紅茶とコーヒー」「ヤマザキビスケットエアリアル」「爆発する首輪」「西北海道新幹線」「極東北独立紛争」をしたらよく分からないものが出来上がってしまった #出された単語で概念綴り
『イランカラㇷ゚テ。今日も、JR北海道を……』
アイヌ語ってやつだろうか。聞き慣れぬ単語に旅情を感じながら、2人掛けの方の座席に陣取る。人もまばらな自由席の車両は、席も選び放題だった。3人掛けの方が広く使えるのにと思ったけれど、「海が見えるのはこっちよ」と言いながらつづみちゃんは荷棚に鞄を収めていた。
札幌を出て1時間ちょっと。乗る前に買い込んだコーンのスナック菓子も、袋の底が見えてきた。
「手前が焼尻島、奥が天売島ね」
刻一刻と色合いを変える海。夕陽は半身を水平線の下に沈めながら、日本海を照らしている。水面は、島影の向こうの戦地を思い起こさせる赤さだった。
***
——海の向こうで戦争かあ。沿海州で騒ぎが起き始めた頃はなんとなくそう思っていた。いくら海を挟んだお隣の話とはいえ、実感が湧かないものだ。
……身近な人が巻き込まれるまでは。
幾年が経った今でも、あの日のことは忘れられない。琴葉家に集められたみんな。神妙な面持ちで話す茜ちゃんと葵ちゃん。
「ゆづくんが……戦場に行くって……」
その一言を聞いた瞬間、居間の空気は急に透明な重さを持った。
どうして?行かないでほしい、止めるべきじゃないの?戦争って……。
あまりに予想外すぎる知らせに、思いが渦巻くが、うまく言葉を紡ぐことができない。おそらく皆そうなのだろう、誰も口を開けずにいた。
「実はもう、出国しててさ……」
「……お願いがある。どうか、どうか弓鶴のことを引き留めんといてほしいんや」
「私たちも考えた。説得して止めようとも思った。でも、本人が一番考え抜いて出した結論だと思うし……送り出すことにしたの」
「まったく、あいつは自己犠牲が過ぎるんや……」
自己犠牲。飢えた獣のために自らの身体を差し出した昔の偉い人。ふと、どこかで聞き齧ったそんな逸話を思い出した。
他人のために自分の命を投げ出す、そんな覚悟は私にはできないなあ……。記憶の中の弓鶴くんの顔が一気に頼もしく見えてきた。
……でもやっぱり、素直に「いってらっしゃい」だなんて伝えられるわけはなかった。
***
『ご乗車お疲れ様でした。終着、南稚内です』
飛行機と新幹線を乗り継いで、かれこれ5時間以上。「隣国」に最も近い街、稚内に着く頃にはすっかり真っ暗になっていた。
ひとまずお腹を満たそうと提案して、駅前の食事処に入る。あまり気乗りはしない理由で来てはいるけれど、せっかくだし美味しいものは食べたい。
「ウニイクラ海鮮丼」と「タコしゃぶ定食」をシェアしながら舌鼓を打つ。
ふっと、こうしてゆっくりと美味しいものを食べられるのも平和なおかげかな、なんていう思いが頭を掠める。……いや、今そんな難しいことを考えてもしょうがないか。思いを巡らせていたら、箸が私の丼に侵略してきてウニをひとかたまり掠め取っていった。お返しとばかりに、タコを2切れいただく。
……美味しい。舌は正直だった。
会計を済ませ、スマホの地図を頼りにホテルを目指す。寝静まった街を歩いていると、犬を連れた人とすれ違う。夜のお散歩だろうか。
……どうしても、首輪に目が行ってしまう。
***
——元気付けられるように、いつでも連絡が取れるようにしよう。誰からともなく、そんな提案が出てきた。
弓鶴くんを含めて、みんなが参加するLINEグループ。みんなでゆるく雑談したりする中で、弓鶴くんは時おり近況報告をしてくれた。
ある日は、大陸にしかいない珍しい生き物の写真。
ある日は、見たこともない野菜を使った現地の郷土料理の写真。
ある日は、現地で知り合った別の義勇兵の人との写真。
……そんな写真を見ていると、あることに気付く。
[……首輪?]
[ああ、これはね、自決用の道具だよ]
[えっ?]
[それって……]
[え、まさか]
[スイッチひとつで、ドカン。いざというときはそれで敵にダメージを与えたり、ね]
普段は努めて私たちを心配させないようにしていた弓鶴くんが、初めて突きつけた戦場の現実。その夜は、それ以上グループが動くことは無かった。
翌朝見ると、スマホの画面には[メッセージの送信が取り消されました]と表示されていた。
***
ホテルのフロントで呼んでもらったタクシーに乗り込み、慰霊塔まで、と告げる。
市街地を抜けると、窓の外には海と原野しか見えない。地の果てまで続くようなその風景は、日本のものとは思えなかった。「隣国」にも、こんな景色が広がっていたのだろうか。
北へと走る車中、私たちは言葉少なだった。目的地が目的地なだけに、運転手さんも会話を振ってくることはしない。静寂を乗せたタクシーは、宗谷岬の手前で海から離れ、丘の上へと登っていく。
降り際に、運転手さんが一言。
「今日の天気だと、サハリンまで見えますよ」
慰霊塔は、肉眼でも「隣国」を望める丘の上に立っていた。
***
——弓鶴くんからの近況報告は、ある日を境に送られなくなった。誰も言い出しはしなかったけど、みんな察していた。
そんなある日、茜ちゃんが1枚の書類のスキャンを貼り付けた。
ユヅル・イオリが、戦闘中に怪我をしたこと。身体に大事は無かったが、脳に障害が生じ、これ以上作戦に従事することが難しくなったこと。健康だった時に表明されていた本人の意思に従って、「武器」となったこと。そんな内容が、翻訳ソフトを通したような日本語で記されていた。
……ふと、少し前に見たニュース映像が、頭の中でリピートする。燃え盛る火炎。爆発音。数十秒の映像を繰り返すたびにクレッシェンドしていく、mf、f、ff……。
決死の作戦。この作戦が決定打となって、紛争はおおよそ国際社会の望む通りに終結したそうだ。「隣国」にも、一応の平和が訪れたらしい。
しばらくは戦後復興の支援のニュースもあったけど、ほどなくして報道はなくなった。多くの人にとっては歴史の1ページに収められて、紛争は終わった。
***
慰霊塔の前で手を合わせる。
……命を投げうってくれたおかげで今日の平和がある。きっと本望だったろう。
言い聞かせるように、心の中で呟く。無理にでもそう思って、溢れそうな気持ちに蓋をした。
顔を上げると、潮風が頬に当たる。普段より1枚多く羽織ってもなお、北の果ての風は冷たかった。誰しも考えることは同じなのだろう。自販機で缶コーヒーを買おうとしたら、電子音が売り切れを告げた。そういえば、弓鶴くんは紅茶派だったっけ。普段あまり買わないミルクティーの缶が、ガチャリと音を立てた。
海を望むベンチに腰掛けて、缶に口をつける。最北の海と、そのさらに北の陸地を眺めながら、答えの出ない問題に頭を巡らせていた。平和、ってなんだろう。一昔前の自分は、こんなこと考えもしなかった。
「そろそろ、行きましょうか」
沈黙を破ったのはつづみちゃんだった。温もりを失った缶をゴミ箱に収めて、慰霊塔を後にする。
帰りは直行便だ。少しギリギリの時間に空港に着いて、足早に荷物検査のゲートを抜ける。
轟音を上げながら、北の大地がぐんぐん眼下へ遠ざかっていく。長旅の疲れに目を閉じたら、空の旅は一瞬で終わった。
到着ロビーの雑踏が、私を一気に現実へ引き戻す。そういえば、お土産買いそびれたな。帰りの電車の中で、ふと思い出した。
さっきの文章、ろくに推敲せずに投下したので、早速書き直したくなっている
RE: https://voskey.icalo.net/notes/9edb80tsq1
在来線だけでなく道内完結の新幹線は俊夫おじさんの放送です(個人的趣味
この世界線では北海道新幹線はオホーツクへ伸びていて宗谷方面へは滝川で分岐する西北海道新幹線でアクセスします。地形的に稚内駅への乗り入れは厳しそうだから南稚内止まり。
この方向だとE席側が西側だよな?ということをちゃんと考えての配席だったり
RE: https://voskey.icalo.net/notes/9edcw5gged
Misskey薄い解体新書 第四版 https://voskey.icalo.net/@szkp0151/pages/1680769076926
初見さんを見かけたらTLに流すやつ
合成音声動画投稿者あるある
街中で聴こえてくる合成音声に対して「調声してくれ……」という気持ちになる
https://twitter.com/_okaz/status/1654309688232796161
RE: https://misskey.io/notes/9edi8rg671
関東だとPiO(京急蒲田)とか川崎市産業振興会館をよく聞くイメージ
東方界隈の即売会で都産貿はあんまり聞いたことないかも(箱が小さいからだろうか)
RE: https://voskey.icalo.net/notes/9edjt2xpki
今度は戦争とか物騒なやつじゃなくてほのぼのとしたものを描きたいです #出された単語で概念綴り
たぶんささつづでします
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みたいなことをツイートしたらなんか思想強めのアカウントからフォロー飛んできてってなった経験
自己紹介は意外と真面目に書いている yayしてるささらちゃんとhazukasiiになってるつづみちゃんの対比がかわいいね
Misskey薄い解体新書 第四版 https://voskey.icalo.net/@szkp0151/pages/1680769076926
初見さんを見かけたらTLに流すやつ
例えば"Text to Speach"(TTS)とか……と思ったけどこれトークだけだし、「合成音声」の訳語ではなかった
んー……ウィキペ流し見した感じだと、"Speech Synthessis"の中にspeechとsingingが含まれてる……?本文中に歌声合成の話題あんまりなさそうだけど……
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中国語版Wikipedia、なぜかが記事として立ってるな?(日本語版だとCeVIOの記事に内包されてるのに
中国語版Wikipedia、「No.7」の記事があるの……!?と思ったら「鸣花Hime、Mikoto」の記事の巻末に記されており、いろいろと大丈夫なのかなこれ
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ちらりと腕時計を目にやる。時計の針は思っていたより倍も早く回っていた。あら、いけない。つい独り言が口をついてしまう。手にした本の代金を渡して、馴染みの古書店を出る頃には、もう待ち合わせ時間の3分前を回るところだった。まあ、遅れるのは割とお互い様だし。そう言い訳しながら、早足でいつもの角に向かう。
交差点に、待ち人の姿はなかった。少し息を切らしながらお茶の水の方に目を向けると、見覚えのあるサイドテールを揺らしながら駆け寄る姿を視界に捉えた。抱える袋には、ギターで有名な楽器屋の名前。あのサイズだと、弦でも買ったのかしら。
「ごっめーん!」
「あら、遅かったじゃない」
「ふう、ふう……そういうつづみちゃんだって、どうせギリギリまで読書タイムだったんでしょ?」
「ふふっ」
悪戯っぽい笑顔で誤魔化しつつ、互いの息が落ち着くのを待ったところで歩き出す。
「それで、今日は何にする?」
「えー、聞くまでもないんじゃなーい?」
人は情報を食べているとはよく言ったもので、やっぱりこの街に来るとカレーを食べたくなる。せめてもの抵抗とばかりに、名の知れた有名店の前を通り過ぎ、裏通りのこじんまりとした店を選ぶ。
「ここなんか良さそうじゃない?」
「そうね」
ランチの店を選ぶのはどうにも苦手で、いつも任せてばかりいる。ただ、不思議とハズレを引いた記憶はない。ささらちゃんはいったいどんな嗅覚をしているんだろう。今日の店も、多分に漏れず当たりの部類だった。
「これは……はむっ……するする進むタイプの味ね」
「辛すぎず甘すぎず……もぐ……止められないね」
「……来週のランチもここにしようかしら」
「えー、さすがにヘビロテしすぎじゃない?」
「古書の即売会が来週末にあるの。一人で来るつもりだけど」
「ほう、即売会……。つづみちゃん、意外な一面もあったもんだねえ」
「何か勘違いしてないかしら?」
テーブルに運ばれた頃には食べ切れるか不安に見えた量も、他愛のない話をしているうちにすっかり平らげてしまった。
氷水のグラスを傾け、一息ついたところで、食後のラッシーが運ばれてきた。
「えっと……頼んだっけ?」
「セットみたいね。なかなか気が利いてるわ」
一口味見する。プレーンラッシーであることを確かめたところで、卓上のスティックシュガーの封を切って、味を整える。
今度は、意識してゆっくりと、グラスを空けていく。話題は、今日の買い物に移っていた。
「もう弦を替えるほどに弾き込んでるのね」
「ちょっとずつでも、毎日積み重ねてると結構な練習量になるからねー。それに、マキさん曰く本当は月イチくらいで替えなきゃいけないらしいし」
「けっこうのめり込んでるのね」
「んで、そういうつづみちゃんはなんか面白いものあった?」
「これ、知ってるかしら?雨月物語。これは現代語訳だけど、元は江戸時代の怪異小説ね」
「カイイ……って、怖いやつ?」
「んー……不思議な話、が多いかしら。例えば、鯉のことが好きで、鯉のことを愛でながら鯉の絵ばっかり描いていたお坊さんの話とか」
「ほう」
「ある日、病で倒れちゃうけど、それまでに積んでいた徳のおかげで、鯉になって自由に泳げるようになって……」
「それでそれで?」
「……まあ、その先は読めていないんだけど」
「えー、めでたしめでたしじゃないってことは絶対一悶着あるやつじゃん」
「気になるところだけど、カレー屋ではあまり開きたくないところね。汚れそうだし」
「おっ、本を大事にしてますなあ。それだけ本を大事にしてるんなら、つづみちゃんも生まれ変われるんじゃない?」
「生まれ変わったら……本には生まれ変われないわね」
「本の虫っていうくらいだし、虫にでもなるんじゃない?」
「いい最期を迎えられなさそうだから嫌」
それに、お互いに感想を言い合える相手がいないとつまらないし。そう言いかけたけど、最後の一言はなぜかラッシーと一緒に飲み込んでしまった。
底には砂糖が溜まってて、いやに甘かった。
カレーといえば神保町だな、から実在性を高めようとしたけど、ノリで書いてたら後半わけわかんなくなったな?ノルマ達成が若干無理矢理だし……
ネタ元の方々はこちら:@parabellum @NagaoshiLongT @shuma_5934r @simotukiaichan2
ささつづが落ち合ったのは駿河台下の交差点。ささらさんが持ってるのはきっとクロサワ楽器の袋。最近マキさんにギターを習い始めた。
そういえばお茶の水最近ほとんど行ってないし、神保町に至っては歩いたことすらない気がするなあ……