icon

Jacinda Ardern: New Zealand PM to step down next month
bbc.com/news/world-asia-643272

no longer has "enough in the tank"……彼女ほどの人でも燃え尽きるのか? 言葉がない。でも個人が仕事の犠牲になってはいかんので、肩の荷を下ろして心身を健康に保ってほしい。

アーダーン首相の印象的なスピーチをいろいろ思い出しています。パンデミックが始まったばかりで世界中でロックダウンとかステイホームとか言ってた頃に、彼女がさまざまな注意や勇気づけを述べたあと最後に "Be kind." と言ったのがいまでもなにかと脳裡に浮かぶ。

当時ありとあらゆるところで、ぴりぴりぎすぎすした言葉が飛び交っていて、そこにぽんっと "Be kind." が聞こえてきて。めちゃめちゃシンプルな単語でありフレーズだけど、いいよなあ、究極的にはそれだよなあって、そのとき思ったんだ。

Web site image
Jacinda Ardern: New Zealand PM quits citing burnout
icon


年森瑛『N/A』(文藝春秋,2022年6月)

性別によるボーダーライン、人間関係につけるラベル、コミュニケーションのための決まり言葉、SNSで共感される表現――自分の内部に湧き出ている、自分が本当に感じていることが、一般的に普遍とされる既存の枠組みにはまり込むことで塗りつぶされてしまいそうになる焦燥感は、誰しも心当たりがあるのでは。

そこに抗いたいと思うことで、自分がとんがった存在になってしまい周囲の空気との軋轢で肌がぴりぴりする感触が、生々しくよみがえる。摩擦によって削られ丸くなった言葉を受容することを、生きやすくなるための知恵および成長と捉えるべきか、敗北としてもどかしく思うべきか。

そのはざまで揺れながらざりざり摩耗してここまで歳をとってきてしまったよ、と高校生である主人公の繊細な硬質さとの対比で自分を顧みざるを得ない。

第167回(2022年上半期)芥川賞候補作でした。