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チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』(訳:千葉茂樹/絵:しらこ/小学館世界J文学館,2022年11月/原書:Charles Dickens "A Christmas Carol (A Christmas Carol. In Prose. Being a Ghost Story of Christmas)" 1843年)

紙の本を1冊買うことでアカウントを取得して名作児童文学の電子書籍をたくさん読めるようになる、小学館100周年企画のうちの1冊。どれから行くか迷いまくったあげく、安直に最初は季節ものを。これはこの企画のための新訳です。小学生のときの岩波少年文庫以来の再読でした。

翻訳の力が大きいと思いますが、まず序盤のスクルージの「ひどいやつ」っぷりの描写が、とても活き活きしていて新鮮でした。ここで引きつけられる。そしてこの状態から、幽霊たちの来訪を受けて過去と現在と未来のクリスマスを目撃していくわけですが、記憶よりもずいぶんあっさりと後悔と改心をしていて、ちょっと驚きました。こんなあっけなかったっけ。

〔つづく〕

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〔つづき〕

そうか、もともと、本来の心根のよさを失っていなかったからこそ、改心の素地があったからこそチャンスを与えられているんだな。そもそも第1章で仕事仲間だったマーリーの幽霊が来た時点でそういうふうに言われているもんな。過去の自分など見せられても心荒むばかり、さかのぼってもさかのぼっても分岐点などありませんってひとにも、別のかたちで「幽霊」が来るのかな……来てほしいけどな……そのひとがそれに気付けるとはかぎらないけどさ……。

カタログとして機能する紙の書籍のほうの紹介文では、この作品が書かれた当時のイギリスではクリスマスを楽しく祝う習慣は廃れかけており、それが復活するのに本作のヒットも一役買っている、というようなことも解説されていて興味深かったです。