21:58:24
📚 リチャード・ランガム『火の賜物─ヒトは料理で進化した』
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期待にたがわずおもしろかった。
ヒトをヒトたらしめたものは何か、という議論について、道具・狩り・肉食など様々な説があるが、料理だというのがこの本の主張。根拠とする実験や調査も多く載っていて楽しかった。章立てが良くて、ちょうど疑問に思うところが次の章にくるのも読みやすかった。

まず、完全に生食だけで過ごすと健康を維持できないらしい。体重・BMIが落ち、女性の半数は無月経になってしまったという結果が出ていた。
生のものは腸での吸収が悪く、たとえば加熱した小麦なら吸収率95%のところ、非加熱だと71%と差が出るそう。(人工肛門使用者の協力で、小腸終端部での消化率を調べた研究。すごい)どんな動物でも虫でも、料理されたものを食べたほうがよく育つらしい。
ちなみに生卵推奨本が1904年に書かれて以来ボディービルダーなどに支持されていたが、近年の研究で卵もやっぱり加熱したほうが吸収率が高かったそう。(加熱91〜94%、非加熱51〜65%)

動物性か植物性かは問わず、とにかく加熱で繊維が分かれ、小さく柔らかくなりゲル化が進むことで吸収率が格段に上がるよう。
しかし料理ではエネルギーそのものは増さないというのがおもしろく、どんな素材でも料理前後での変化は平均ゼロという。

料理されたものを食べると臓器もコンパクトで済み、煮たジャガイモを食べるとき必要な歯の大きさは、生のジャガイモに比べて56〜82%減少するそう。ヒトは消化器も同サイズの霊長類の60%サイズらしい。
ヒトを脳が大きい類人猿としてとらえようとするが、口の小さな類人猿と定義してもいいくらいだという一文があった。

旱魃で食糧不足になった際、フィンチという鳥は固くて大きい木の実を食べられるくちばしの大きい種の生存率がもっとも高く、くちばしの小さい鳥は15%しか生きられなかったらしい。生き残った個体も1年でくちばしが発達した(くちばしが大きい遺伝子が多く残った)というので、器官ってそんなスピードで変わるんだ…と思った。旱魃が終わってから元のくちばしサイズに戻るまでは15年かかったそうだが。

チンパンジーは1日のうち6時間を咀嚼に使っているらしく、大変だ…。とくに生肉は咀嚼に時間がかかるので、柔らかい内臓(脳・腸など)以外は捨てる場合があるのだとか。葉とまぜて肉を噛みやすくすることがあるそうだが、料理前夜っぽい行動を感じる。あとふだんは生で食べないが、火事で焼けたときだけ食べる実があったりするらしい。

筆者は霊長類学者なので、霊長類の食べるものを色々食べてみたらしいがチンパンジーのものが一番うまかったと書いていた。それでも大半はヒトには食べられないようだが。

ヒトは賢くなったから料理が生まれたのか、料理していたら賢くなったのかは、実験でもあったように生食で身体を維持するのは困難かつ生殖能力にも問題が出るわけなので、そもそも前者では種の繁栄ができないという。料理により咀嚼と消化を省エネルギー化できたことで、脳にエネルギーを回せるようになった順だろうとのこと。

その他、この話がすごかった。
>北極圏での体験にもとづいてヴィルヒャルマー・ステファンソンが書き記している。収穫が少ない季節になると、脂肪がほとんど手に入らず(もとより植物はない)、食事のなかでタンパク質が支配的な多量養素となる。"脂肪がふつうにある食事から急に赤身だけの食事に切り替えると、最初の数日で食べる量がどんどん増え、一週間ほどたつと、重量にして当初の三倍から四倍の肉を食べている。そのころには飢餓とタンパク質中毒の症状を呈している。立てつづけに食事をとり、食べ終わるたびに空腹を感じ、大量の食物で不快な膨満感があり、気持ちが落ち着かなくなってくる。一週間から一〇日で下痢が始まり、脂肪をとるまでそれが治まらない。そして数週間で死が訪れる。"

あと1822年銃で横腹が吹き飛んだ青年を助けた医師が、その後胃を外から見られることを活用し、消化運動そのものを観察しつづけたという話もすごいなと思った。時代…。ただ青年はそのことを恨んで、他の医師から死後臓器を買いたいと提案されても拒絶し、家族は遺体を完全に腐敗させたうえで地下2.5mという深さに埋めたらしい。それもまたすごい。

11:38:21
2025-03-06 22:26:46 自爆ボタン🔘の投稿 bakusan_zibaku@misskey.io
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02:20:29
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黒歴史が思い出されてウワーッてなるとき、ウワーッのかわりにお経でも唱えたらいいのではないか?と思ったが、むしろそれが本来の使い方か?

00:51:47
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大カトーさんじゃなくて小カトーさんだった

00:43:40 00:50:00
📚 ペルシウス『諷刺詩』(国原吉之助訳『ローマ諷刺詩集』)
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"お前は普段着(トガ)の言葉を追求し極めるのだ"、"お前はローマの庶民の昼食を主題とすべきだ"という文章が途中であった通り、庶民的な内容だったのがおもしろかった。

1世紀の人なのに現代で通じすぎる↓

>ヒマラヤ杉の樹脂で磨いて保存に耐える巻子本を後世に残したいという希望さえ馬鹿にするような、そして巻子本の頁が店頭で鯖や乳香の包み紙となるのを心配する必要のない傑作を残したいという願いさえさげすむような人がいるだろうか。

>「健全な精神を、立派な名声を、世間の信用を。」これは、他の人に知られてもよいようにはっきりと言える祈りの言葉である。しかし、次のような祈りは、自分の本心に向けて口の中でつぶやかれるのである。
>「ああ、神よ、どうか叔父がぽっくりとあの世へ逝きますように。きっと盛大な葬儀は挙げますから。」あるいは、「おお、どうかヘーラクレースの恵みによって、私が鋤いている畠地の中から、銀の壺がかちっと音を立てて出て来ますように。」そして、「私が第二位の遺産相続者として、背後から追撃しているあの小さな被後見人の名前が、どうか遺言書から抹殺されますように。(後略)」

>君は、筋肉に元気な力を、老齢となっても信頼できる体を、神に求める。よろしい。そうし給え。ただし、こうした祈りを神々が受理することを邪魔してきたのは、そしてユーピテル(神)に同意を拒否させているのは、山と積まれた料理皿であり、風味のある脂っこいシチューの中の肉である。

>私は幼少の頃、たびたび目にオリーヴ油を塗っていたことを覚えている。それはカトーが自刃し果てるときに発した気高い言葉を暗唱したくないためであった。(※ただれ目を口実に勉強を怠けた意)

小カトーの扱い笑う。あと遺言書の後ろの人消えろとか銀の壺落ちてないかなとかもよすぎる。
しかし解説にあったが、原文は独特な表現が多く厄介・難解扱いだったらしい。14・16世紀の学者に、「読まれたがっているくせに人に理解されようとしなかった」と言われているのがまたおもしろかった。