展示作品のご紹介:源氏物語シリーズ-第十九帖「薄雲」(雪明り)
(2011年|日本|山本 茜) 撮影:鍋島 徳恭
平安情緒を今に残す京都の山間部に工房を構える山本茜は、『源氏物語』五十四帖それぞれの世界観を截金ガラスで表現する『源氏物語』シリーズをライフワークとしている。この作品は第十九帖「薄雲」の、「雪かきくらし降りつもる朝」から始まる、明石の御方と姫君の別れの場面を表現している。明石の御方は、身分の低い自分が育てても姫君の将来に栄えがないため、我が子の出世を願い、源氏の妻の紫の上に養育を任すことを決意した。しかし、いざ別れの日を迎え、やはり我が子を手放したくないとの葛藤、そしてもう二度と会うことはないかもしれないという悲しさとで思い乱れる。全体を五角柱に削り出すことで作品内の截金文様が乱反射し、上から覗くと明石の御方の複雑な心中を、横から見ると雪が静かに降っている情景が感じられ、物語の中の登場人物の心境と、降り積もる雪の情景が重なるような作品となっている。
企画展 ~響き合う東西の美~ ガラス・アートの世界
https://www.hakone-garasunomori.jp/event/east_west-2.html