新しい保険「暴行保険」について説明します。この保険は、加入者が他者を暴行したとき、加入者が負うべき債務を弁済する保険です。ただし、この保険の加入時点で「暴行するつもりだ」「暴行してしまってもしかたがない」と企図していた場合には、保険金は支払われません。アルコール依存症の場合も加入することができますが、保険料は高額になります。
この暴行保険がカバーしようとしているリスクの典型的類型は、「保険加入時点で暴行の犯意を有していないが、自身の粗暴な性格のため、いつか暴行の犯意を持ってしまうかもしれない」というリスクです。暴行保険に加入していなければ、損害賠償の原資に事欠いたり、自身の生活防衛の観点から、暴行に関する民事裁判を引き伸ばし、被害者に対する補償のスムーズな履行を阻害してしまう可能性があります。暴行時点では、被害者に対しむしろ「損害を与えたい」と考えているのですが、犯意を持つ以前や、事件を反省したあとでは、「損害をスムーズに補償したい」と考えているはずです。つまり、将来誰だかわからない相手に対して暴行を行うリスクに備えたいという需要が理論的に存在します。