ある部分を除いて私たちとあまり変わりない現代を生きるある男は、立石 和真という青年である。

彼の隣によくいる彼女は、バイオロイドの「A-7型」である。
いや、バイオロイドというものの、既にロボット三原則とかそういった問題は解決したので、人権を持ち、人間と融和を果たした次なる世代の人間であるので、個々人の名前があったりする。
相方の名前は産山 愛莉という。

しかし、人間特有の問題、たとえば殺人事件は未だ解決できていない。
これを最終的かつ不可逆的に解決する事を目的とした政府の部署がある。
「人類課題対策部障害克服課」
…2人がこの部署で出会った瞬間に、人類とバイオロイドの運命が変わっていく…

彼ら自身、もしくは人間自身の起源と失われたファンタジックな神秘、古き世界より深淵、科学が齎した狂気、夥しい犠牲の上に立つ国家と陰謀が渦巻く混沌の物語

Ⅰ：人類初期化音声(リコール・コード)
Ⅰ-1：バイオロイドと人類の融和は驚くほどスムーズに行われた。
しかし、どうやって受け入れられるようなものを作り上げたのだろう。
新製品として発表するわけでもなく、自然にいつの間にか入り込んだ人間がバイオロイドだったという事は日常茶飯事になってしまった。
人間とバイオロイドの境目はいつの間に消えたのだろうか？

これは、知る者は遍く死ぬほどの秘史であるが、この世界の人間は人間に作られ、それが連綿と続くループ構造となっている。
例えば、今に信仰される神は過去の人間であり、信仰が世界の東西を二分した。
一つ神(ひとつかみ)と数多つ神(あまたつかみ)の信仰、その信仰の系譜は、人間の育成方針の違いに過ぎなかった。
一つ神の系譜は、人間と動物を完全に分離し、あまり生えぬ穀物を少しと肉を食べた。
数多つ神の系譜は、遍く生物に感謝し、作物と少しの肉を食べた。

時は経ち、一つ神の系譜は間違えた。
人間を動物側に入れたのだ。奴隷制度の始まりである。

数多つ神の系譜は、作物が沢山収穫できる状況でなければ広がらない。

大多数は一つ神の系譜で、数多つ神の系譜はとある作物が取れる地域でしか生きられなかった。

しかし今では一つ神の系譜は一掃され、数多つ神の系譜こそが繁栄を極めている。
この謎の大繁栄の謎は、何処にあるのだろうか。