「すこーし離れたところに大きな屋敷があってね」
自分たちが住んでいる屋敷から出て、石畳をまっすぐ。水没館が見えたら右に曲がって、けものみちを進んで、紅葉林に入ったら左に進んで、小さな小川を飛んで渡った先。
「変なとこじゃないよ!ちゃんと何人も住んでいるお屋敷なんだけど」
20人くらいは住めそうな大きな屋敷が建っている。
少し古びてはいるものの、手入れはきちんとなされているようで、ツタのひとつも絡んでいない。
「ちょっと一人で行くには怖くて……」
くすんだ雰囲気の屋敷だ。
人気はあるはずなのに、どこか色褪せていて、全部が遠いところに行ってしまったような、そんな雰囲気の屋敷。
いっそ場違いと言えるほどに、真っ赤なポストだけが色褪せずに佇んでいる。
「お願い!手紙を届けるまで一緒についてきてほしいの!」
そう言って、"郵便屋さん"を名乗る少女は頭を下げた。
少女展爛会「親愛なる■■■■へ」
あてさきふめいのてがみがとどいています。