#読書
鈴木大介『ネット右翼になった父』(講談社現代新書,2023年1月)
いわゆる「ネトウヨ」と呼ばれるような人たちが多用する差別的な言葉を対面で使ったり、社会的弱者を貶める意見を言ったりするようになっていた晩年の父親について、あらためていろいろ思い返し、ほかの人たちの話も聞いて、検証していったプロセスが開示されている。
拒否感が強すぎて心を閉ざしたまま看取ってしまったけど、のちになって考えると、実際の父はきついネットスラングを使う一方で、中国にも韓国にも好意的な言動があったし、保守政権を積極的に支持しているふうでもなかった――。
結局著者は、父親が攻撃的に言及した対象も、息子である自分の目に映っていた「ネット右翼になった父」も、それぞれにリアルを見ておらず虚像でしかなかったのでは? 世代や生い立ちによる感覚のすれ違いこそあったけど、父は極端な思想に傾倒していたわけではなかったのでは? などと感じるようになっていく。
〔つづく〕