06:59:06
山川夜高🏖️小説と絵
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2025-03-20 23:16:23 イタリの投稿
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06:59:13
山川夜高🏖️小説と絵
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2025-03-21 01:14:46 イタリの投稿
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07:00:27
山川夜高🏖️小説と絵
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今日💇行くから「この髪型にしてください」って言おう(???)
そのネズミも怪異だから引っ越した方が良いよ…………
07:27:35
山川夜高🏖️小説と絵
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「緑色の楽器は売れないっていうジンクスがあるんだよ」 #novel_sing_alone
小説『シンガロン[DEMO ver.]』冒頭試し読み
Track.1
July, 2000
大学進学で上京してきたトーキョーの町は想像上の東京よりものどかな田舎で、区じゃなくて市で、案外、山で、畑もちょっとあって、それでも電車に1時間乗れば新宿だの渋谷だのといった名前の知っている大都会に着くし、電車もバスも10分間隔で真夜中まで走っているし、モノレールには初めて乗ったし、新宿や渋谷にまで足を伸ばさなくても、ちょっとした街に出れば服屋もCD屋もあるし、ライブハウスがあった。
カシマの進学先の大学は山を切り開いた造成地に立っていて、隣には別の大学も立っていて、街道沿いの住宅地には自分と同じような若者があたり一帯に住んでいた。薄い壁の木造アパートは隣の家のテレビの音が丸聞こえだったが、カシマはさして気にならなかった。カシマが育った田舎の一軒家も同じぐらい壁が薄く、2階の自室から1階の居間のテレビの音が丸聞こえだった。
カシマは大学の軽音楽サークルに入部した。もとから音楽に特別詳しいわけではなかったが、大きな音を出してみたかったのと、漠然と抱いていた心の穴を埋めてくれる新しい趣味を得たかった。サークルは大学の文化祭でのライブ公演や、OBのバンドと共にライブハウスのブッキングイベントも行っていたが、活動の半分は飲み会だった。新入生歓迎会でさも当然のように未成年飲酒がまかり通っているのに驚いたが、「ボク小学生の時にお父さんがコップで飲んでた日本酒をお水だと思って飲んだら失神しちゃって、救急車呼ばれたあとお父さんとお母さんに病院で殴られてそのまま入院したんだよね」と思い出話を語ったら、宴席の空気は凍りついて、カシマが無理に酒を誘われることはなくなった。
「ねえ、それ笑い話なの?」
あとになって、昼の児童心理学の講義の合間に、同じサークルの同級生から尋ねられた。
「え? 笑えなかった? だってもう過ぎた話だし」
ベースをやってみたかったので、仕送りを使い込んでエレキベースを買った。音が太いのが格好良かったので、バンドでどういう音楽をやるのか決めないままフェンダー・ジャパンのプレシジョンベースを買った。決め手は音色よりもシェイプよりもボディの塗装だった。ラメを散らしたように輝くボディは黄緑色でもミントグリーンでも青緑でもない本物の緑色をしていた。
「緑色の楽器は売れないっていうジンクスがあるんだよ」と楽器屋の店員が言っていた。
「どうも流行らなくて売れないから、なかなか作られないみたいだ。なんでも、ステージ映えしにくい色だかららしいな」
「そうかな?」楽器屋の壁面にかけられた色とりどりのギター・ベースを見上げてカシマは言った。
「ボクは緑、カッコイイと思うけどなぁ」
心機一転して金髪にブリーチしたせいか、バイトの面接に落ち続けたので、しばらくは食事を抜いて頑張って過ごした。
新入生で組んだバンドではスコアが売られている流行りの邦ロックをカバーしたが、カシマにはあまり好みの歌ではなかった。だが譜面なしの耳コピが出来るほどカシマも習熟していなかったし、好みの曲は難しかったし、悶々としながら身内しか来ないブッキングのチケットノルマをさばくのを付き合った。
学業やサークルの人間関係が大変なとき、お金がなくて部屋で寝ているとき、東京で買ったLinkin ParkやSlintのアルバムをずっと聴いていた。愛の言葉や希望や慰めも、悲しいという気持ちをそのまま音にしてぶつけられるほうが良いと思った。日記のような言葉遣いで綴られた聴き取れる歌を聴かされるよりも、意味がすぐに頭に入ってこない外国語のほうが好ましかった。気付くいたら洋楽ばかり手に取るようになっていた。
ひとりで過ごす東京の季節は慌ただしく流れていき、夏、秋、文化祭、雪の降らない冬を経て、二度目の春を迎え、新歓ライブや複数大学合同のライブイベントを経た。夏休みに入る前の7月の最後の登校日、部会に出ると先輩たちは帰省前の飲み会の相談をしていたが、話の流れで、サークルが毎年恒例にしている肝試しの話題になった。新入生を脅かすために、毎年場所を変えて夜の山や町外れの廃屋に忍び込むらしい。去年のカシマは参加しなかった。というのも、1年生のあいだ、カシマは宴会に呼ばれなかった。
「なんで肝試しするの?」とカシマは尋ねた。「怖いことすると良くないんじゃないの? 入っちゃいけないところは入っちゃいけないから駄目なんだし。ボク幼稚園のときにじいちゃんちの井戸に子供は近づくなって言われてたけどイトコといっしょに見に行って、そしたらじいちゃんとばあちゃんがすごく怖い顔でボクのこと探しに来て、『おまえにイトコはいない』ってすごく言われたんだよね。おじさんとおばさんにはその話を他所でするなって言われたし。だから行っちゃいけないところに行くとよくわからないことになるから、やめたほうがいいんじゃないの?」
宴席には悲鳴に近い声も上がり、押し黙る者もいたが、肝試し推進派には火が付いてしまったようだった。
「な! ホンモノだっているだろ? お化け屋敷じゃなくって、本物のバケモンを見てえよなあ!」
そういうわけであれよあれよと候補地が決まり「霊感体質」認定をされたカシマの同行も決まってしまった。
曰く、大学から西のほうに行った山間の地域に立っている道祖神がヤバいらしい。山中のどこからか笑い声が聞こえてくる、どこかで大麻草が密造されている、祭囃子のような音が聞こえる、らしい。しかし一番ヤバいのは道祖神そのものだと噂話は伝えている。どのようにヤバいかというと、それを直接言うことも「ヤバい」ので噂の中身は伝達されない。けれども場所は正確に伝えられている。山間といえど同じ市内なので、大学からは車で1時間もかからない場所だ。
「去年の○○城跡は広いだけでつまんなかったな。階段がキツイだけだったわ」
「大麻って、オバケじゃなくてもヤバいじゃん」
「笑い声とか音がするのも、ヤバい人間がいるだけじゃねーの」
「カルトの施設とかあったらどーする?」
「だから、オバケなんていねえんだよ」
肝試しの主催の先輩は、人を怖がらせるのが大好きだがオカルトは信じておらず、「なにもない」という確信を得るために大学の周囲一帯の怪談や噂話を集めていた。彼のとっておきの話が、この「ヤバい道祖神」の話だという。
次の週末の夜、カシマは先輩が運転するレンタカーの後部座席に詰め込まれていた。
---
続き(肝試し当日の様子)の試し読みはブログ記事へ→
https://libsy.net/blog/4226
新作小説『シンガロン[DEMO ver.]』は3/23開催イベント TAMAコミ10の「G-06 シーサイドブックス」のブースと後日の通販で販売します。
#SeasideBooks #novel_sing_alone
08:00:29
山川夜高🏖️小説と絵
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2024-03-17 10:17:36

些々細📯

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11:44:37
山川夜高🏖️小説と絵
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11:52:37
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もっとこう、美術というのは静寂のなかでひとりで見るもので……
11:54:04
山川夜高🏖️小説と絵
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日付指定事前チケットを買った山川: 60分待ち
チケットを持ってない人: チケットを買うまで90分待ち
12:06:18
山川夜高🏖️小説と絵
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12:06:30
山川夜高🏖️小説と絵
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「緑色の楽器は売れないっていうジンクスがあるんだよ」 #novel_sing_alone
小説『シンガロン[DEMO ver.]』冒頭試し読み
Track.1
July, 2000
大学進学で上京してきたトーキョーの町は想像上の東京よりものどかな田舎で、区じゃなくて市で、案外、山で、畑もちょっとあって、それでも電車に1時間乗れば新宿だの渋谷だのといった名前の知っている大都会に着くし、電車もバスも10分間隔で真夜中まで走っているし、モノレールには初めて乗ったし、新宿や渋谷にまで足を伸ばさなくても、ちょっとした街に出れば服屋もCD屋もあるし、ライブハウスがあった。
カシマの進学先の大学は山を切り開いた造成地に立っていて、隣には別の大学も立っていて、街道沿いの住宅地には自分と同じような若者があたり一帯に住んでいた。薄い壁の木造アパートは隣の家のテレビの音が丸聞こえだったが、カシマはさして気にならなかった。カシマが育った田舎の一軒家も同じぐらい壁が薄く、2階の自室から1階の居間のテレビの音が丸聞こえだった。
カシマは大学の軽音楽サークルに入部した。もとから音楽に特別詳しいわけではなかったが、大きな音を出してみたかったのと、漠然と抱いていた心の穴を埋めてくれる新しい趣味を得たかった。サークルは大学の文化祭でのライブ公演や、OBのバンドと共にライブハウスのブッキングイベントも行っていたが、活動の半分は飲み会だった。新入生歓迎会でさも当然のように未成年飲酒がまかり通っているのに驚いたが、「ボク小学生の時にお父さんがコップで飲んでた日本酒をお水だと思って飲んだら失神しちゃって、救急車呼ばれたあとお父さんとお母さんに病院で殴られてそのまま入院したんだよね」と思い出話を語ったら、宴席の空気は凍りついて、カシマが無理に酒を誘われることはなくなった。
「ねえ、それ笑い話なの?」
あとになって、昼の児童心理学の講義の合間に、同じサークルの同級生から尋ねられた。
「え? 笑えなかった? だってもう過ぎた話だし」
ベースをやってみたかったので、仕送りを使い込んでエレキベースを買った。音が太いのが格好良かったので、バンドでどういう音楽をやるのか決めないままフェンダー・ジャパンのプレシジョンベースを買った。決め手は音色よりもシェイプよりもボディの塗装だった。ラメを散らしたように輝くボディは黄緑色でもミントグリーンでも青緑でもない本物の緑色をしていた。
「緑色の楽器は売れないっていうジンクスがあるんだよ」と楽器屋の店員が言っていた。
「どうも流行らなくて売れないから、なかなか作られないみたいだ。なんでも、ステージ映えしにくい色だかららしいな」
「そうかな?」楽器屋の壁面にかけられた色とりどりのギター・ベースを見上げてカシマは言った。
「ボクは緑、カッコイイと思うけどなぁ」
心機一転して金髪にブリーチしたせいか、バイトの面接に落ち続けたので、しばらくは食事を抜いて頑張って過ごした。
新入生で組んだバンドではスコアが売られている流行りの邦ロックをカバーしたが、カシマにはあまり好みの歌ではなかった。だが譜面なしの耳コピが出来るほどカシマも習熟していなかったし、好みの曲は難しかったし、悶々としながら身内しか来ないブッキングのチケットノルマをさばくのを付き合った。
学業やサークルの人間関係が大変なとき、お金がなくて部屋で寝ているとき、東京で買ったLinkin ParkやSlintのアルバムをずっと聴いていた。愛の言葉や希望や慰めも、悲しいという気持ちをそのまま音にしてぶつけられるほうが良いと思った。日記のような言葉遣いで綴られた聴き取れる歌を聴かされるよりも、意味がすぐに頭に入ってこない外国語のほうが好ましかった。気付くいたら洋楽ばかり手に取るようになっていた。
ひとりで過ごす東京の季節は慌ただしく流れていき、夏、秋、文化祭、雪の降らない冬を経て、二度目の春を迎え、新歓ライブや複数大学合同のライブイベントを経た。夏休みに入る前の7月の最後の登校日、部会に出ると先輩たちは帰省前の飲み会の相談をしていたが、話の流れで、サークルが毎年恒例にしている肝試しの話題になった。新入生を脅かすために、毎年場所を変えて夜の山や町外れの廃屋に忍び込むらしい。去年のカシマは参加しなかった。というのも、1年生のあいだ、カシマは宴会に呼ばれなかった。
「なんで肝試しするの?」とカシマは尋ねた。「怖いことすると良くないんじゃないの? 入っちゃいけないところは入っちゃいけないから駄目なんだし。ボク幼稚園のときにじいちゃんちの井戸に子供は近づくなって言われてたけどイトコといっしょに見に行って、そしたらじいちゃんとばあちゃんがすごく怖い顔でボクのこと探しに来て、『おまえにイトコはいない』ってすごく言われたんだよね。おじさんとおばさんにはその話を他所でするなって言われたし。だから行っちゃいけないところに行くとよくわからないことになるから、やめたほうがいいんじゃないの?」
宴席には悲鳴に近い声も上がり、押し黙る者もいたが、肝試し推進派には火が付いてしまったようだった。
「な! ホンモノだっているだろ? お化け屋敷じゃなくって、本物のバケモンを見てえよなあ!」
そういうわけであれよあれよと候補地が決まり「霊感体質」認定をされたカシマの同行も決まってしまった。
曰く、大学から西のほうに行った山間の地域に立っている道祖神がヤバいらしい。山中のどこからか笑い声が聞こえてくる、どこかで大麻草が密造されている、祭囃子のような音が聞こえる、らしい。しかし一番ヤバいのは道祖神そのものだと噂話は伝えている。どのようにヤバいかというと、それを直接言うことも「ヤバい」ので噂の中身は伝達されない。けれども場所は正確に伝えられている。山間といえど同じ市内なので、大学からは車で1時間もかからない場所だ。
「去年の○○城跡は広いだけでつまんなかったな。階段がキツイだけだったわ」
「大麻って、オバケじゃなくてもヤバいじゃん」
「笑い声とか音がするのも、ヤバい人間がいるだけじゃねーの」
「カルトの施設とかあったらどーする?」
「だから、オバケなんていねえんだよ」
肝試しの主催の先輩は、人を怖がらせるのが大好きだがオカルトは信じておらず、「なにもない」という確信を得るために大学の周囲一帯の怪談や噂話を集めていた。彼のとっておきの話が、この「ヤバい道祖神」の話だという。
次の週末の夜、カシマは先輩が運転するレンタカーの後部座席に詰め込まれていた。
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12:16:47
山川夜高🏖️小説と絵
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山川夜高🏖️[G06]TAMAコミ (@mtn_river)
12:31:04
山川夜高🏖️小説と絵
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18:35:10
山川夜高🏖️小説と絵
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小説『シンガロン[DEMO ver.]』A5判54ページ 即売会価格600円
2025.3.23 新刊
ロックバンド✕青春✕微ホラー✕群像劇=?
2000年7月、大学の軽音サークルの肝試しで呪われた(?)新人ベーシストのカシマは、お祓いに行ったお寺の人となんやかんやでバンドを組むことに......
ロックバンド「環-Tamaki-」結成の話。
小説『シンガロン[DEMO ver.]』表紙・裏表紙
小説『シンガロン[DEMO ver.]』本文p.2(目次)- p.3
小説『シンガロン[DEMO ver.]』登場人物紹介
シリーズ作品:『ファング』を読んでおくと楽しいけど読まなくても大丈夫です。
18:35:13
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July, 2000
大学進学で上京してきたトーキョーの町は想像上の東京よりものどかな田舎で、区じゃなくて市で、案外、山で、畑もちょっとあって、それでも電車に1時間乗れば新宿だの渋谷だのといった名前の知っている大都会に着くし、電車もバスも10分間隔で真夜中まで走っているし、モノレールには初めて乗ったし、新宿や渋谷にまで足を伸ばさなくても、ちょっとした街に出れば服屋もCD屋もあるし、ライブハウスがあった。
カシマの進学先の大学は山を切り開いた造成地に立っていて、隣には別の大学も立っていて、街道沿いの住宅地には自分と同じような若者があたり一帯に住んでいた。薄い壁の木造アパートは隣の家のテレビの音が丸聞こえだったが、カシマはさして気にならなかった。カシマが育った田舎の一軒家も同じぐらい壁が薄く、2階の自室から1階の居間のテレビの音が丸聞こえだった。
カシマは大学の軽音楽サークルに入部した。もとから音楽に特別詳しいわけではなかったが、大きな音を出してみたかったのと、漠然と抱いていた心の穴を埋めてくれる新しい趣味を得たかった。サークルは大学の文化祭でのライブ公演や、OBのバンドと共にライブハウスのブッキングイベントも行っていたが、活動の半分は飲み会だった。新入生歓迎会でさも当然のように未成年飲酒がまかり通っているのに驚いたが、「ボク小学生の時にお父さんがコップで飲んでた日本酒をお水だと思って飲んだら失神しちゃって、救急車呼ばれたあとお父さんとお母さんに病院で殴られてそのまま入院したんだよね」と思い出話を語ったら、宴席の空気は凍りついて、カシマが無理に酒を誘われることはなくなった。
「ねえ、それ笑い話なの?」
あとになって、昼の児童心理学の講義の合間に、同じサークルの同級生から尋ねられた。
「え? 笑えなかった? だってもう過ぎた話だし」
ベースをやってみたかったので、仕送りを使い込んでエレキベースを買った。音が太いのが格好良かったので、バンドでどういう音楽をやるのか決めないままフェンダー・ジャパンのプレシジョンベースを買った。決め手は音色よりもシェイプよりもボディの塗装だった。ラメを散らしたように輝くボディは黄緑色でもミントグリーンでも青緑でもない本物の緑色をしていた。
「緑色の楽器は売れないっていうジンクスがあるんだよ」と楽器屋の店員が言っていた。
「どうも流行らなくて売れないから、なかなか作られないみたいだ。なんでも、ステージ映えしにくい色だかららしいな」
「そうかな?」楽器屋の壁面にかけられた色とりどりのギター・ベースを見上げてカシマは言った。
「ボクは緑、カッコイイと思うけどなぁ」
心機一転して金髪にブリーチしたせいか、バイトの面接に落ち続けたので、しばらくは食事を抜いて頑張って過ごした。
新入生で組んだバンドではスコアが売られている流行りの邦ロックをカバーしたが、カシマにはあまり好みの歌ではなかった。だが譜面なしの耳コピが出来るほどカシマも習熟していなかったし、好みの曲は難しかったし、悶々としながら身内しか来ないブッキングのチケットノルマをさばくのを付き合った。
学業やサークルの人間関係が大変なとき、お金がなくて部屋で寝ているとき、東京で買ったLinkin ParkやSlintのアルバムをずっと聴いていた。愛の言葉や希望や慰めも、悲しいという気持ちをそのまま音にしてぶつけられるほうが良いと思った。日記のような言葉遣いで綴られた聴き取れる歌を聴かされるよりも、意味がすぐに頭に入ってこない外国語のほうが好ましかった。気付くいたら洋楽ばかり手に取るようになっていた。
ひとりで過ごす東京の季節は慌ただしく流れていき、夏、秋、文化祭、雪の降らない冬を経て、二度目の春を迎え、新歓ライブや複数大学合同のライブイベントを経た。夏休みに入る前の7月の最後の登校日、部会に出ると先輩たちは帰省前の飲み会の相談をしていたが、話の流れで、サークルが毎年恒例にしている肝試しの話題になった。新入生を脅かすために、毎年場所を変えて夜の山や町外れの廃屋に忍び込むらしい。去年のカシマは参加しなかった。というのも、1年生のあいだ、カシマは宴会に呼ばれなかった。
「なんで肝試しするの?」とカシマは尋ねた。「怖いことすると良くないんじゃないの? 入っちゃいけないところは入っちゃいけないから駄目なんだし。ボク幼稚園のときにじいちゃんちの井戸に子供は近づくなって言われてたけどイトコといっしょに見に行って、そしたらじいちゃんとばあちゃんがすごく怖い顔でボクのこと探しに来て、『おまえにイトコはいない』ってすごく言われたんだよね。おじさんとおばさんにはその話を他所でするなって言われたし。だから行っちゃいけないところに行くとよくわからないことになるから、やめたほうがいいんじゃないの?」
宴席には悲鳴に近い声も上がり、押し黙る者もいたが、肝試し推進派には火が付いてしまったようだった。
「な! ホンモノだっているだろ? お化け屋敷じゃなくって、本物のバケモンを見てえよなあ!」
そういうわけであれよあれよと候補地が決まり「霊感体質」認定をされたカシマの同行も決まってしまった。
曰く、大学から西のほうに行った山間の地域に立っている道祖神がヤバいらしい。山中のどこからか笑い声が聞こえてくる、どこかで大麻草が密造されている、祭囃子のような音が聞こえる、らしい。しかし一番ヤバいのは道祖神そのものだと噂話は伝えている。どのようにヤバいかというと、それを直接言うことも「ヤバい」ので噂の中身は伝達されない。けれども場所は正確に伝えられている。山間といえど同じ市内なので、大学からは車で1時間もかからない場所だ。
「去年の○○城跡は広いだけでつまんなかったな。階段がキツイだけだったわ」
「大麻って、オバケじゃなくてもヤバいじゃん」
「笑い声とか音がするのも、ヤバい人間がいるだけじゃねーの」
「カルトの施設とかあったらどーする?」
「だから、オバケなんていねえんだよ」
肝試しの主催の先輩は、人を怖がらせるのが大好きだがオカルトは信じておらず、「なにもない」という確信を得るために大学の周囲一帯の怪談や噂話を集めていた。彼のとっておきの話が、この「ヤバい道祖神」の話だという。
次の週末の夜、カシマは先輩が運転するレンタカーの後部座席に詰め込まれていた。
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#SeasideBooks #novel_sing_alone
19:24:49
山川夜高🏖️小説と絵
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2025-03-21 08:41:47 konuriの投稿
konuri@fedibird.com
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19:25:14
山川夜高🏖️小説と絵
@mtn_river@misskey.design
さっき出先だったから改めてちゃんと見るけど
19:26:13
山川夜高🏖️小説と絵
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イタリさんのキャラデザがいい、konuriさんの作画もいい
20:04:04
山川夜高🏖️小説と絵
@mtn_river@misskey.design
頂いた絵の感想です(※失礼)
20:13:31
山川夜高🏖️小説と絵
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20:14:39
山川夜高🏖️小説と絵
@mtn_river@misskey.design
2025-03-21 20:08:27 HLQの投稿
HLQ@misskey.design
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20:14:40
山川夜高🏖️小説と絵
@mtn_river@misskey.design
2025-03-21 20:09:30 HLQの投稿
HLQ@misskey.design
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20:15:03
山川夜高🏖️小説と絵
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20:19:31
山川夜高🏖️小説と絵
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20:22:18
山川夜高🏖️小説と絵
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山川夜高(小説,絵,装丁) (@mtn_river)
イラスト:青野(創作バンド Drive to Pluto) Jazz Bass
1111:ベースの日 ジャズベースのハイポジションを弾く青野(創作バンド Drive to Pluto ベース) 小説『Drive to Pluto』登場人物
図説:青野クン情報(架空のロックバンド Drive to Pluto のベーシスト) 小説『Drive to Pluto』登場人物
イラスト:メカクレキャラの前髪めくり部 他人に前髪をめくられて怒っている青野(Drive to Pluto)
20:22:39
山川夜高🏖️小説と絵
@mtn_river@misskey.design
青野クンもめくればデコは出ます(めくれば誰でも出る)
20:27:12
山川夜高🏖️小説と絵
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21:27:20
山川夜高🏖️小説と絵
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2025-03-15 21:20:03 とわなみ✒️の投稿
towanami@misskey.design
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21:27:23
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2025-03-16 21:17:10 とわなみ✒️の投稿
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22:19:25
山川夜高🏖️小説と絵
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2025-03-21 22:04:20 イタリの投稿
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22:19:55
山川夜高🏖️小説と絵
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「懐」すきです(
)