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伊藤亜紗 | 東京工業大学 リベラルアーツセンター http://www.liberal.titech.ac.jp/w/labo_exp_ito/

“偶然”を評価するか否かが、科学とアートの違いです。

 たとえばある学生が、「延命治療はすべきだ」という発言をしました。これは科学者としての答えですね。人間の寿命はのばせるだけのばすのがよい、つまり生命をコントロールすればするほど、それは科学の勝利になるわけですね。でも、「じゃあ、あなた自身はどうやって死にたいの?」と聞くと、「畳の上で家族に囲まれて自然に死にたい」と言うんですね。科学者として目指す未来と、自分が望む未来が矛盾してしまっている。科学にとって自分を消すことは大切だけれど、ときどきは自分を出して、自分の研究が自分を裏切っていないか立ち止まって考えてみること、これがリベラルアーツセンターのかかげる「人間性」や「社会性」の第一歩なのではないかと思います。