俺も
このアカウントは、notestockで公開設定になっていません。
街一つ丸ごと使ったような、一攫千金イベントみたいなものに参加していた。10人ちょっとくらいのグループで「〇〇から逃げろ」とか「△△に行け」みたいなミッションをこなしていたが、期日に間に合わずグループ全員で退場することになった。
退場する際に「あと1時間でここから二度と出られなくなります。ご注意ください」と係員に急かされたり、退場ゲートに「ここでの記憶は消去させていただきます」と書かれていたり、何やら不穏な雰囲気が。しかし出ないことには仕方ないので、出入り口にされていた雑居ビルに入った。
中に入ると壁沿いに螺旋状の階段が伸びており、数フロア上の踊り場のようなところに扉が見えた。途中に「1列に並んで昇ること」と注意書きがあり、何となく全員1列で階段を上がる。
扉の前に着いたが、鍵がかかっている。すぐ横の壁に「先頭の者をここから突き落とせ」と張り紙があった。俺は前から3番目。先頭だったおじさんは、何かを悟ったように、全てを諦めたように、手すりにもたれかかって両手を上げた。
この状況を見て、後方から来た若い兄ちゃんが「こうなりゃなるしかねえだろ」とおじさんの首を掴み、そのまま階下に突き落とした。僅かなうめき声と鈍い音が聞こえた。
この直後に扉は開いたが、その先も同じように階段が続いていた。どうやら無限ループの空間に入ってしまったらしい。
しばらくすると下から別の10人くらいのグループが上がってきて「俺達も同じように1人死んだ」と言う。ゲートにあった「記憶を消去する」は、人間ごと消すという意味だった。
何か策は無いかと辺りを見回すと、天井に通気口のような蓋があった。数人で1人を持ち上げて、とりあえず開けてみた。中で大きなファンが回っており、これを止めないことには入っていけない。
しばらく下で思案していると、頬に湿った空気を感じて、通気口からミストのようなものが出ていることに気づいた。その瞬間、目の前の壁にプロジェクターで映像が投影された。
映像には、男性1人と子供が3人映し出されていた。おそらく親子なのだが、同じ無限ループ空間にいるらしい。父親が、子供がやっと入れる大きさの通気口に我が子を逃がしている様子が見て取れた。
ここで気づいてしまった。自分の頬に付いたミストが赤黒いことに。
周囲もそれに気づき、中には青ざめた顔で失神する女性もいた。
その場にいた全員が言葉を失い、ザワザワと絶望感が広がったところでやっと目が覚めた。
このアカウントは、notestockで公開設定になっていません。