07:41:25
長い。正月の課題図書
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まだ読み終わってないのだけど、82%まで行ったので、もう読んだも同然、と自己認定する。

Weltunordnung | Masala, Carlo | Broschur chbeck.de/masala-weltunordnung

2016年に出た本に、コロナ禍や昨年のロシアによるウクライナ侵攻を踏まえて1章加えた改訂版らしい。2022年12月発行。

タイトルは、世界無秩序ぐらいの意味か。今後しばらくの世界は、米国一極集中でも米中二極でも多極構造にも落ち着かない。国連やEUのような国家間組織は実効のある施策を打てず、存在感を減らしていく。米国は今後も軍事費支出で他を圧倒的に上回り続けるが、それによって他国の内政にうまく介入できるわけではない。「西側」の考える民主主義や社会的安定は力によって世界の他の地域に広められない。そうしようとする試みはこの30年間何度もあったが、対象地域での国家破綻を招いてきた……
 という気のめいる話が延々と積み上げられる。
 著者はドイツの政府系の研究機関にいる人のようで、ドイツ人向けに、秩序の輸出のために他国に干渉するのをやめるように説いている。
 ちょっとおやっと思ったのは、中国やロシアなどの権威主義国家が今後存在感を増す、という話では無く、例えば中国も分裂する可能性を指摘していること。世界のどの地域でも広域秩序を作る取り組みが失敗する傾向にある、と。所詮、国家を超える権威はなく、国際法を強制することは難しく、各国はそれぞれ自国利益を優先せざるを得ない、と。この著者は決してトランプ政権に肩入れしているわけではないのだけれど、言ってることがダブって見える。

22:13:31
長い。正月の課題図書、の続き
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読み終わった。
 ロシアのウクライナ侵攻以降に書かれた章は、昨年5月か6月ぐらいまでの経緯しか踏まえていないため、今見るとかなり西側にとって悲観的な見通しを述べている。ロシアのガスに依存する国々が侵攻開始後しばらくは身動きが取れていなかったのは正しいが、それらの国々もなんとか冬を乗り切っている。オデーサの海上封鎖も解かれたし、各国がウクライナへの戦車の供与にも踏み切った。当たり前だけれども、こういう展開をこの本は予想できていない。誰かできていたかというと怪しい。
 一方、多分この本の主張にやや反して、ロシアの侵攻が米国とEUとNATOの結束を急激に高めたことをしっかり指摘している。それでも、国連安保理がこの事態に何ら機能していないことには変わりないのだけれど。
 そういえばNATOのストルテンベルグ事務総長が来日したそうですね。何を話し合ったのだろう……