#読書
楊駿驍『闇の中国語入門』(ちくま新書,2024年6月)
既存の語学テキストを大量に読み込んだ著者が、どの中国語教科書でも明るく前向きな会話文ばかりが例示されていることに異を唱え、もっとリアルに複雑な「闇」を包含する世界を表現できる言葉をとりあげてくださっています。
似た単語の使い分けられ方、日本語ではいろいろに訳せてしまう単語の本質的なイメージの捉え方などの説明は実用面でもありがたいのですが、やはりそれらの単語の背景にある、いまの中国の若者たちが置かれた社会の状況、心のありようについての解説が、とても興味深い。
どうにもヒトゴトではなかったり、焦りやしんどさが胸に迫ってきたりもするので、単純に面白いというのもちょっと違う感じはしますけれども。
あと私は中国のコンテンツを多少見ていますが、やはり辞書を引き引き意味をとっていくだけでは、分からないことってありますよね。たとえば読みながらまず想起したのは、動画サイトBilibiliのアニメ『時光代理人』の番外ミニキャラ化シリーズにおける、主人公たちが食事を注文しようとするが心を決められないというエピソード(※)。
〔つづく〕