※一次創作『子々孫々まで祟りたい』のキャラ奥武蔵とにゃんぷっぷーの話でノート小説タグに流した話の続きものですが、これだけでも読めます


　にゃぷがお昼のカリカリを食べていたら、玄関の扉が開いたにゃ。

「ただいま」

　オタくんが帰ってきたにゃ！？　え、まだお昼にゃ！
　とりあえず、てむてむ跳ねて玄関まで迎えに行ったにゃ。

「おかえりにゃ、今日は早いにゃ」
「……サボった」
「ぷにゃ！？」

　サボるのはあんまり良くないにゃ。でも、オタくんはとても疲れた顔をしていて、にゃぷはそう言えなかったにゃ。

「にゃんぷっぷーを吸いたくなって……」

　オタくんは靴を脱いで家にあがって、にゃぷを抱き上げたにゃ。そのまま、オタくんはにゃぷの頭頂部に顔を埋めたにゃ。

「あー、ベイクドモチョチョのにおい……あとちょっと魚のにおい……」

　それは、今食べてたカリカリが魚のカリカリだったからにゃね……。
　オタくんは、にゃぷを抱いたまま部屋に入って、どかっと椅子に座ったにゃ。

「オタくん、どうしたにゃ？」
「……いやなことがあって」
「ぷにゃあ」

　オタくんは話を聞いてほしい感じにゃ。にゃぷはかわいがられることしかできないけど、お話を聞くくらいなら、いくらでも聞いてあげるにゃ。

「俺さ、父親が政治家なんだ」
「ぷにゃ！？」

　びっくりしたにゃ！　それって、すごく偉いんじゃないのにゃ？

「だから、俺、東大入ってエリートコース進んで後を継げってずっと言われてたんだ」
「ぷにゃ！？」

　え、もしかしてオタくんは東大に行った人なのにゃ！？

「東大は合格したんだけど、これからずっと向いてない道で頑張んなきゃいけないのかと
思ったら人生絶望しちゃって、「東大は受かったから頑張りました、もうこれ以上頑張れません」って家出して行方不明になったことがあって」
「ぷにゃあ……」

　オタくんは今のお仕事、編集者がすごく好きみたいにゃ。だから、政治家はしたくなかったっていうのはわかるにゃ。

「家出先で優しいお姉さんに痛いの取って慰めてもらって、しばらく休ませてもらって家帰ったんだけどさ、「だから跡継ぎたくありません」って言ったら父親が怒ってさ」
「心配してくれなかったのにゃ？」

　子供がいきなり行方不明になったら、お父さんは普通心配すると思うにゃ。

「心配だったから余計怒ったのかも。そしたら、姉ちゃんが父親にキレてさ」
「ぷにゃ？」
「「あんたは、弟にばっかり！　あんたの子供はもうひとりいるでしょう！　なんで私には何もやらせてくれないわけ！？　女だから！？」って」
「ぷにゃ？　お姉ちゃんは政治家したかったのにゃ？」
「やりたかったんだって、父親が全然期待してくれないから諦めてただけで。で、父親も「おおう……」ってなって、姉ちゃんが父親の後継ぐことになって、今父親の秘書してる」
「解決したみたいに聞こえるにゃ」

　オタくんは今落ち込んでるにゃ。他にまだ何があったのかにゃ？

「一応その時は解決したんだけどさ、俺は1年休学して、その時にWeb小説のスコッパーになって、編集者になりたくなって、それには高学歴が有利だから普通に東大卒業したんだ。で、今まで割と仕事は順調だし、今度父親と会う時に自慢したかったんだけど」
「いいことに聞こえるにゃ」
「姉ちゃんに「お父さんには有能なことは隠せ、あいつは跡取りはいくらいてもいいと思ってる」って言われてさ……」
「ぷにゃ！？」

　お父さん、まだ諦めてなかったのにゃ！？

「俺としてはさ、俺の選んだ道でいっぱしになってるって父親に認めて欲しかったんだ。でも父親は跡取りにするの諦めてないんだ。姉ちゃんが俺のことを思って言ってくれてるのもわかるんだ。でも、なんか悲しくて」
「ぷにゃあ……」

　にゃぷは、どうしていいかわからなくて、とりあえずオタくんのほっぺをなでなでしたにゃ。

「えっとにゃ、オタくん、すごく頑張ってるにゃ。お父さんがオタくんの頑張りをわからなくても、にゃぷはオタくんが頑張っててすごいってわかるにゃ。だから、そんなに落ち込まないでにゃ」
「……にゃんぷっぷー……」

　オタくんは、顔を上げた。

「ねえ、にゃんぷっぷー、これからも俺がほめてほしい時はほめてくれる？」
「ほめるにゃ！」
「じゃあ、半休の届けだしちゃったけど、やっぱり会社戻ってしばらく仕事するっていったらほめてくれる？」
「とっても偉いにゃ！」
「……よし！」

　オタくんは、にゃぷをそっと机に置いて立ち上がったにゃ。

「サボり終わり！　仕事してくる！」
「頑張ってにゃ！」

　にゃぷは、ペンライトでフレーフレーをしたにゃ。

「ありがとうね、にゃんぷっぷーがいなかったら、ずっと落ち込んでた」
「お安いご用にゃ」

　にゃぷはかわいがられるのがお仕事だと思ってたにゃ。でも、もう少し、できることがあるのかもしれないにゃ。