とっとこ飲み会ハム太郎
隅っこ譲らぬハム太郎
大好きなのは一次会解散
やっぱり帰れぬ三次会
とっとと帰ろうハム太郎
会社の歯車ハム太郎
大好きなのは睡眠薬
もらうと安心ハム太郎
咄嗟に出てくる愛想笑い
いつでも心に不安感
信頼できるのは預金残高
いつかは欲しいよ幸福
とっとこ飲み会ハム太郎
隅っこ譲らぬハム太郎
大好きなのは一次会解散
やっぱり帰れぬ三次会
とっとと帰ろうハム太郎
会社の歯車ハム太郎
大好きなのは睡眠薬
もらうと安心ハム太郎
咄嗟に出てくる愛想笑い
いつでも心に不安感
信頼できるのは預金残高
いつかは欲しいよ幸福
見知った居酒屋の、キンと冷えたビールに旨いつまみ。そして、久々に会った旧友との懐かしい思い出話の交換の合間に、ふと、かつて自分の身に起きた不思議な話を披露した。
「不思議な話だねぇ」
そう言って、目の前に座る旧友はこくり、と烏龍茶を飲む。
「お前、酒はいいの?下戸だったけ?」
「いや、僕はいいよ。この後、ちょっとやることがあるからね」
「おいおい、仕事あるのかよ!」
それは誘って大丈夫なやつだったのか?と心配になると、それを察したのか旧友はヘラヘラと笑い「でも、君とは飲みたかったから、誘ってくれてよかったよ」と応える。
「それに、慣れた作業だからそんなに大変じゃないんだ」
「へぇ?お前、仕事何やってんだっけ?」
「さばかん」
「え?鯖缶?」
「脳を取り出して、生体サーバーにするんだ」
「え?」
「脳って繊細な臓器だから、流石にお酒飲んで作業はしたくなくって……」
訳がわからない。目の前の旧友は微笑みながら言葉を続ける。
「でも、君が覚えてるなんて驚きだなぁ。でも、完全に覚えてる訳じゃなく、多少の混乱はあるみたいだね」
「何言ってんだよ、お前」
「良いデータが取れたにゃ。これで生体サーバーににゃってくれるんだから君は優秀は個体だにゃ」
「いや、なんで猫語なんだよ」
鯖缶とか、生体サーバーとか、意味がわからない。それに。
そもそも、こいつは誰なんだ?
「大丈夫。君に今から起こることは、にゃぁんにも痛くないし、怖いことでもにゃいんだ。全ては恍惚な夢の中を揺蕩っていれば終わる。そして、もっと幸せな場所に行ける」
旧友って、いつの?小学校?中学校?こいつの名前は?おかしい。全てが。俺にはこいつが見えているはずで、こいつはここに確かにここにいるはずで、それなのに、俺はこいつの姿形を何一つ認識することができない。髪の色も目の形も腕の長さも体の大きさも、さっきとは違う何かで、これまでのどれとも一致しない。
「からだ、もう、うごかないでしょ?」
言われて、気づく。逃げたいのに、体が言うことを聞かない。神経が切れたように、手足は重く体にぶら下がるだけだ。胴体も木のようにまっすぐ突っ立ったまま、それだけ。閉じることのできない口の端からたらりと涎が垂れる感覚がする。
「やがて意識が落ちる。眠るようにね。次に目を覚ましたら、君は君じゃなくなっている。ただ、幸福の川を泳ぐだけだよ」
だから、さぁ。
そう言って、目の前の「ナニか」は右手のひらを俺に向かって差し出し、どうぞ、としてみせた。
「君が、ニンゲンとして楽しむ、最後の晩餐を、どうぞお食べなさい」
ナニかがうっそりとほほ笑む。認識できなくとも、それがとても「美しく」「喜ばしい」ことだと脳が理解した。うんともすんとも言わなかった腕がゆっくりと動く。けれど、これは俺の意思ではない。上から吊られた操り人形のように、唐揚げを、梅水晶を、ビールを、手が口元に運び、咀嚼し、嚥下する。体が俺の意思を離れていく。恐ろしいことのはずなのに、とても、ああ、とても、幸福だった。
昔お金に困っていた時に知り合いから「保証人なしで即日入居可の激安物件がある」と教えてもらったことがある。その時は流石に怪しいと思って遠慮したけど、思い出してみればあの時見せてもらった物件資料の号室は205号室で……
気になってあの時紹介してくれた知り合いに連絡を取ろうとしたが、連絡先が見つからない。というか、彼の名前はなんだっけ?彼が彼女かもわからない。顔も声も思い出せない。
「あれ」は一体なんだったんだろう。
昔お金に困っていた時に知り合いから「保証人なしで即日入居可の激安物件がある」と教えてもらったことがある。その時は流石に怪しいと思って遠慮したけど、思い出してみればあの時見せてもらった物件資料の号室は205号室で……
気になってあの時紹介してくれた知り合いに連絡を取ろうとしたが、連絡先が見つからない。というか、彼の名前はなんだっけ?彼が彼女かもわからない。顔も声も思い出せない。
「あれ」は一体なんだったんだろう。
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