安部菜々は、過去を乗り越えてきたアイドルだ。弱冠17歳ながら様々な苦労をし、多くの下積みを経て、我々の力添えもあってか今の立ち位置にいる。過去が彼女を支えている。だが、その目は先を見つめ続けていた。近年は従来とは方向性の異なる仕事をもこなし、[トワイライト・ウサミン]では「過去に縛り付ける者」を敵対存在として演じることで、未来を見据えることを正義であると間接的に訴えた。だが、過去はなくてはならないものだ。世界は5分前に突然生まれたわけではない、少なくとも、我々がそう認識している限りは。当然、"むこうの彼女"にとってもそうだろう。だからこそ、かの世界が観測できなくなる前の、おそらく最後の「仕事」で世界中の電波を乗っ取り、「ノスタルジック」の肩書をつけて発信をしたのだ。楽しい時間の始まりである。地球上のテレビにラジオにネットを乗っ取り、全てを終えたら星の彼方へ漕ぎ出そうというのだ。…我々は観測者ではあるが、当然彼女のプロデューサーでもある。いいだろう、我々はあなた方の想いを忘れない。未来を掴む鍵として、記録を紡ぎ伝えようではないか。そうとも、10年後もその先もだ。 #限怪