愛知の半ばまで来ましたが眠気は一向にきません
かつての約束をひきづりながら月に向かって歩きつづけることこそが、晴嵐の贖罪だった。《一緒に帰ろう》母なる海。生ぬるい海水が、ぬるついた石が、深い生命のにおいが、静かに月明かりに照らされていた。《一緒に還ろう》水に沈む感覚は、あの不定形の体でも同じなのだろうか。頭からうまれて足からかえる。綺麗な輪をえがいてこの夏は終わりを迎える。呼吸さえいらなくなった喉にすべての感傷が突き刺さり、つっかえたように笑った口からはわずかな希望さえ吐き出せなかった。悲しみに沈む晴嵐を、月だけが見ている。
かえらなければ。朝が、来る前に。