父親が "I love having children, they are just adorable, aren't they?" と底氣色惡く我の耳元へ囁きた。
臭し吐息などではない。其の優越氣味た笑顔と生暖かい口息に乘せられた貴心言葉が我が耳內へと通り拔ける風樣に、我は少くない憤りを覺えた。次ぐ無関係な事柄に我の意見を誘ふ、幾秊過ぎ見飽きた動作を,我は心内,『子供らしき』とさへ形容した。
我は大人だ。
──少くとも今はさういふ幻語に縋りつきたい。
"Can you please stop whispering into my ears? It makes me (very) uncomfortable.."。
我は、自分の其の瞬閒の想ひを愚直に声へ綴りた。
我に心理學は解らぬ。然し、昨年も今年も幾年度もと繰り返される數〻の異常行動…は我の惱種となりてゐた。樗才な我心の何處かで,若しかすると,愚直に私情を傳へれば、沈着冷静 物事を理解してくれるのでは?と自欺してゐたのかもしれない。
"I'm gonna go before I punch this kid." と、急上する怒りを抑へた笑顔で言い放つ。當人を唐突に打ち毆らず其の邊に有りた地濡注意看板を威勢よく蹴飛ばした當りも、此の家では大黒柱の寛大さに過ぎぬ。出戶を開く前に言はれた捨て臺詞はもう、忘れてしまつた。